「生きることは欲張る事」先日読んでいたマンガ(『九龍ジェネリクスロマンス』眉月じゅん 集英社)にこんなセリフが出てきたので驚いた。妙に納得した。
「欲張る」という言葉に我々日本人は一見良くないイメージを抱きがちだ。でもそんなことはない。欲を持つということは生きていく上で大切な事だ。逆に、何もかも満たされてしまったら、それはある意味とても死に近い。私事で恐縮だが、私にもそんな時期があった。就寝時に「痛かったり苦しかったりするのは嫌だが、このまま目が覚めなかったとしてもそれはそれで一向にかまわない。」そう思いながら眠りにつく事がその頃はよくあった。何か自分が透き通っていくようなイメージを抱いたのを覚えている。今にして思うとそれは危うい時期ではあった。興味深いのはその頃いわゆる“鬱”だったり、ストレスで押しつぶされそうになっていたのではなく、むしろ精神的に満たされて幸福だったという点だ。変に周囲から認められたり、持ち上げられたりするのはどうも当人の為にはならないらしい。
無論、現在の私はそんなことはない。言い返せば欲がある。外国に行って暮らしてみたいし、美味しいものを食べたい。いい酒を飲みたいし、素敵なパートナーだって欲しい。なにより自分の書いた文章をもっと多くの人に読んでもらいたい。生きてく上で欲って大切なのだ。
ただ、問題があるとすれば、その欲が自己完結的なものか?それとも他者を巻き込む恐れのあるものか?の違いだろう。例えば「一度でいいからマチュピチュ」に行ってみたい。というのと「俺は宇宙を手に入れる!」では話が大きく違ってくる。マチュピチュに行くのはその人の勝手だが、宇宙を手に入れるとなると他者を巻きこむこと必須だ。己の欲に他者を巻き込んではいけない?その辺りが難しい所ではある。だからと言って“身の丈に合った欲”なんていかにもつまらないではないか?とも思う。
さあ、この文章をお読みの貴方は“欲”を持っているだろうか?それはどんな類の“欲”だろうか?自己完結的?それとも他人を巻き込んでなんぼ?
何にせよ、「生きることは欲張る事」なのだ。
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