測る

人生に対する姿勢

 どこかの誰かが言いそうなことだが、≪書く≫という行為は相手との距離を測る事に他ならない。私も文章を書くことにより、社会(世界)との距離を自分なりに測ってきた。近づきすぎて余計なものまで見えてしまう事もあれば、遠すぎてよく解らなかったという事もある。この人にはもっと近づいても大丈夫だろうと思っていた相手に、手痛いしっぺ返しを食らう事もある。あるいはもっと近づいていればよかったと後悔する場合もある。
 

 先日『アルキメデスの大戦』という映画を見た。面白かったので原作の漫画(三田紀房著)も読んでいる。主人公の櫂直(かい ただし)は幼少時よりメジャーを持ち歩いていて、何かというと計測せずにはいられないという変な癖のある人物だ。私が面白いと思ったのはこの櫂直がモノの長さを測る際は極々細かいのに、対ヒトの距離感を図るのはモノを図る時ほど頓着しない点だ。それでいて今のところ一つの例外を除いて人間関係はうまくいっている。

 どうも三田紀房さんという人はあまり人の心の機微を描くことには興味がないのだろうと思う。主人公の櫂直の場合、測る対象は主に無生物だが、こと相手が人間となるとこれがメンドクサイ。こちらが測っているのと同様に、向こうもこちらとの距離の取り方を測っているのだから。その上でお互いにとっての最適解を見つけられればベストなのだろうが、なかなかそうはいかない。近づいたり離れたり、何かを一定に保つというのは簡単なようでいて難しいことかもしれない。必要なとき必要なだけ近づいて、そうでないとき、若しくは距離をとるべき時はそれとなく離れる。そんな生き方が出来れば一流かもしれないが、そんな意味での一流になど私はなれそうもないし、またなりたくないのも確かだ。

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