先生

教育

 私の学生時代の恩師はカウンセリングをその専門としておられた。退職後は本業以外にも、仙台のFM放送局で「歌と涙とハッピー哲学」と言う番組の担当DJをなさったり、ユーモアに関する研究をなさったりとお忙しくいておられる。

 私が先生に初めてお会いしたのは教免をとる関係で受講していた教育心理学の授業だった。その授業の中で先生が「カウンセリングとは敢えてデフォルメして言うなら、いじめられて泣いている子をどうやったら笑わせられるかを考えるようなもんや。」とおっしゃていた。「こりゃ面白そうだな。」と感じたのをよく覚えている。それがきっかけで、その後2年間、その先生のもとで教えを乞うこととなった。そして、その2年間は私にとって非常に価値ある時間だった。

 その先生がおっしゃっていた。

「君、違うのは当たり前なんや、同じところを見つけるんや。」

 当時は解らなかったが、最近になってようやく先生のおっしゃるところの意味が解ってきた気がする。

 その頃の(今だってそうかもしれないが)私は“違い”にばかり目がいっていた。日本人と欧米人の違い。関西人と東北人の違い。男と女の違い。大人と子供の違い。健常者と障害者の違い。“違い”つまり差異にばかり目が行きがちな私に対して、それでは、お互いの間に溝が深まるばかりだ。違っているのは当たり前で、「あなたと私にはこんなにたくさん共通するところがある。」とフォーカスしなおす事で、お互いの関係がうまくいく。「むしろ上手くいくようにするんや。」と先生は言外に仰っていたのだろう。

 その先生が「歌と涙とハッピー哲学」と銘打った番組のDJをしておられる。初めて見たときは「何故、カウンセリングの専門家が哲学?」と不思議に思ったが、やはりこれも今ならば解る。先日のブログ『哲学の意義』で述べたように、あらゆる学問を俯瞰する位置にあるべきは【哲学】なのだ。それが先生にとっては【歌】であり【涙】であり【ハッピー(笑)】であるのだろう。(もし違ってたらごめんなさい)

 もう一度確認しておこう。「違っていて当たり前。」いわゆる多様性の一歩先を行く考え方だ。そして何にフォーカスするかは、どうしたら互いの関係がうまくいくか?を最優先とする。そしてそこには【涙】と【歌】と【ハッピー(笑)】がある。先生らしい。

 ああ、今になってやっと先生のおっしゃっていたことがわかる。少しだけほんの少しだけ先生に近づけた気がした。

 先生、有難うございました。

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