コロナビール

友人

「コロナ買い占めようかな?」
「えっ、???何?」
「いや、コロナビール、メキシコ産のビールだよ。買い占めようかなと思って。」
「なんだビールか?何言いだすのかと思った。」
「今凄いんだよ。風評被害で。コロナビール売れ残ってる。みんな買わないんだよ。」
「なるほど、新型コロナウイルスと同じコロナだからか。全然関係ないのに。馬鹿馬鹿しいっちゃ馬鹿馬鹿しいけど。そんなもんかもね。」
「そう。だから俺が買い占める。」

 先日、運転中に助手席に乗っていた友人との会話。話しながら昔TBSの「日本昔はなし」で観たあるお爺さんの話を思い出した。そのお爺さんは一人貧しく暮らしていて節分の夜だというのに一緒に豆まきをする相手もいない。近所からは楽しそうに「鬼は外、福は内!」という掛け声が聞こえてくる。寒さと寂しさに耐えかねたお爺さんは、あろうことか「福は外、鬼は内!」と叫ぶ!すると家々を追い出された鬼たちが集まってきて、お爺さんと仲良く節分の夜を過ごしたそうな。
「福は外、鬼は内!」いいじゃないか。愛がある。
私の友人にもこのお爺さんと同じ類いの愛がある。それは大きなものだ。身の丈に合わないプライドや生活力のないところなど欠点をあげればきりがないが、それらを補って余りある美点だと思う。もし奥様がこの点に魅かれたのだとしたら、それは大・大・大正解だ。ところでこの話ちゃんと落ちがある。

「あっそうか!売れ残って値下げされてんのか!」
「いや別に。」
「なんだよ!定価かよ!」
と答えた私は、どうも俗人らしい。

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