「真ん中だよ。」

友人

 学生時代、友人の部屋でDJ本田さんのドキュメンタリー番組を見ていた。
 DJ本田さんは北海道出身。高校を中退した彼は上京後ディスコで働いている時にヒップホップに出あう。そこからDJとして活動して約10年。だが当時の日本ではDJへの理解は広まらない。
「結果は日本では出ない」
 そこで彼は1990年にニューヨークのDJバトル世界大会に日本人として初めて参加。その時は1回戦で負けるものの、会場の盛り上がりを肌で感じた。2度目に参加した92年の大会では準優勝。一躍脚光を浴びる。
 「日本では駄目だったけど、アメリカでは受けた」
 活動の軸足をアメリカに移したDJ本田は、その後大手レコード会社と契約を結び現在に至る…。確かその様な内容だったと思う。(20年後の現在、その映像you tubeで見つけてみたが見つからなかった。)
そのTV番組の中で、DJ本田さんは自分のCDのジャケットがレコード会社の真ん中に堂々と飾られているのを見て何気なく
「真ん中だよ!」と言った。
「カッコいい!!!」
あくまでも気負わない、それでいて確かな自信に溢れたDJ本田さんに対して、我々はリスペクトの念を抱いた。

 その友人は今、東北の某自治体で家庭を持ち大勢の部下と共に働いている。彼が先日44歳の誕生日を迎えた。私はDJ本田にあやかって
「真ん中を行けよ!」
と、メッセージを送った。
このメッセージには、お前と違って俺はこの年で結婚もしていないし、職も転々として、たいした年収もない。その俺にはもう無理だけれど、お前は「真ん中を行けよ!」と言う意味が込められていた。これに対し友人は
「真ん中を行こうぜ!」
と返信してくれた。思わず目頭が熱くなった。彼はシャイな性格でめったに本心をあらわにない。たまに真に迫る時はいつだってジョークに紛らわせる。でもこちらの言わんとしている事はしっかりと察してくれる。そんな奴だ。ごく短いフレーズの中に彼の想いが込められている。
「ありがとうh。俺も真ん中を行くよ!」

コメント

タイトルとURLをコピーしました